料理を上手に作るコツは、やっぱり知っておきたい知識をおおざっぱでもいいので理解しておくことが一番の近道だと思います。
細かい事や言葉は覚える必要はないですが、なぜそうなるのかある程度知っているのと知らないのでは、全然違うと思いますよ!
そこで今回は知ってほしい事のひとつ、肉を美味しくするには!です。
少しマニアックな記事になってしまいますが、あ~そうなんだ!ぐらいの軽い気持ちで読んでみて下さいね!
肉が美味しくなる秘密
ステーキは焼くだけでも美味しいですが、そこにもいろんな科学変化の上に成り立っています。
今回特に伝えたいことは、加熱の温度とたんぱく質についてです。
それはどちらかと言えば低温調理で説明していきます。
タンパク質の種類と凝固温度
肉を構成するタンパク質は大きく三つあります。
筋原繊維タンパク質、形質タンパク質、筋膜(主にコラーゲン)で、これらのたんぱく質は熱の変性温度が違い、これが肉の硬さの秘密になります。
筋原繊維タンパク質は45~50℃
筋形質タンパク質は55~60℃
コラーゲンは65℃で凝固します。
加熱していくと初めに筋原繊維タンパク質が凝固し始めますが、筋形質タンパク質はまだ凝固していないので噛むと柔らかく感じられます。
レア―やミディアムが軟いく感じられるのはこの為です。
さらに温度を上げていく(60℃位まで)と筋形質タンパク質が凝固し始めて筋原繊維タンパク質を結束していくため硬く感じられるようになります。
ウエルダンなどの状態ですね!
さらに温度を上げていくとコラーゲンが凝固して縮み肉全体を結束しさらに固く感じられます。
70℃位を維持していくとコラーゲンが溶け始めゼラチンに変化し始めます、その為に柔く感じられれるようになるのですが、レア―の時とは違いほかのタンパク質凝固している状態での柔らかさです。(加熱し続けるとこれらのタンパク質も細胞破壊で柔くはなっていきます)
美味しい加熱は?
温度とたんぱく質の関係は分かって頂けたと思います。
ではおいしく加熱するにはと言う事になりますが、肉の種類や部位によっては違います。
理由はコラーゲンが少ない部位なんかは長時間煮込む必要が無いのは、何となく分かりますよね!
そんな肉質の時はメイナード反応が一番影響が出ます。
次の記事を参考にしてください。
ただ最近は低温で加熱して肉全体を60℃位に加熱して、取り出して周りを香ばしく焼いてと言う方法もとることが有ります。大量に提供する時とか全部を均一な状態でする時などです。
またローストビーフなんかには低温で作る方が失敗無く美味しく作る事が出来ます。
低温で加熱
それでは低温で長い時間かけるに適していると言うと、コラーゲンを多く含む食材になります。
例えば鶏肉なんかがそうです、コラーゲンは皮の部分に多く含まれていますから!
以前の記事に書いた鴨のコンフィ―は硬い肉を柔らかく食べる料理ですから低温でするのが一番良い調理方法となります。
⇒シェフ~三ツ星の給食の鴨のコンフィ―のレシピや作り方は?最高に美味しい?家庭でも出来る?
⇒シェフ~三ツ星の給食の鴨のコンフィ―のレシピや作り方は?作ってみた!
ここでも書きましたが、鴨を低温でゆっくり加熱することでコラーゲンが徐々にゼラチン化して柔くなり、長時間煮込むことで他のタンパク質の細胞破壊により崩れるようになっていきます。
低温で作ることにより水分の蒸発などが無くジュ-シーに仕上がると言う事になります。
記事には書かなかったのですが、オイルと一緒に煮込まなくてもいいです。どちらかと言えばよりジュ-シーに仕上げるには入れない方がいいです。
ただし真空にしなければなりませんが、空気が有ると均一に加熱されないからです。
ただ風味の点では劣ります!
料理は本当にうまくいかないことが多いですね!
殺菌の温度
では衛生面はどうでしょうか?
低温殺菌では60℃30分とされていてます。
また食肉の加工販売の基準でも食品衛生法で「製品の中心温度を63℃30分以上加熱するまたはこれと同等以上の効果が有る方法で加熱殺菌する事」となっています。
ですので3時間以上煮込めばその所は十分クリアーしているはずです。
炊飯器で大丈夫?
レストランや工場ではスチームオーブンなどでが有りますが、家庭では電気炊飯器を使って作るのが楽ですよね!
ご飯を炊かない夜なんか作れば、朝には間違いなく出来てますから。
最近の炊飯器の保温機能は細菌が繁殖しにくくごはんの水分がなくならないような低温殺菌温度を目安(65~69℃)に設定されていますから、この調理法にはもってこいの道具です。
最後に
肉を美味しく感じるのには
食肉に含まれるたんぱく質(筋原繊維タンパク質)の「ミオシン」「アクチン」が熱で変性する時
「ミオシンは変性しているが、アクチンは変性していない状態」が美味しいと感じられるそうです。
ミオシンは50度 アクチンは65℃で変性し始めます。
また少し古い炊飯器ではあまり正確ではないようですし、スロークッカーなどは魔法瓶と同じ原理なので少しづつ冷めていきますので注意が必要です。
ちなみに参考まで
指で計る温度の目安
40℃……指を入れてちょうどいい湯加減と感じます(魚介の凝固開始温度)
50℃……手を入れた時熱いと感じる温度(野菜をこの温度に浸すとシャキとします、ヒートショックと言われるものです)
60~75℃……指を入れて1・2・3と数える事が出来る温度(肉、魚のタンパク質凝固温度、肉は70℃。魚は60℃で温度上昇を止めると柔らかく仕上げる事が出来る温度)
どうでした?少し専門的な記事ですが、なるほどと言うくらいでいいです。
知っているのと知らないのでは大違いですからね!
またタンパク質でなく調理の原理も参考にしてください、ブレゼと言う技法です。
ビーフシチューの肉が軟くなる原理です。
コラーゲンでなく繊維をほぐすということになります。
⇒本格的ビーフシチューを家庭で作る方法は?肉を柔らかくするコツを紹介
運営者 春眠