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低温調理によく出てくるD値とかZ値っていったい何やねん?加熱殺菌に必要なん?

  • 2019年3月23日
  • 2020年6月2日
  • 低温調理
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低温調理をしようとするとD値とかZ値とかF値とか出て

「いったい何やねん?」と思いますよね!

「それに計算式やら・・・料理するのに数学がいるんかいなぁ?」

でもこれは低温調理に限らず、調理をする人は当然知っておかなければならない知識で、

家庭でも知っていた方がいい知識です。

むずかしい事は別に

「ふ~ん!なるほどね」と言うレベルで大丈夫なんで!

今回はD値とZ値についての記事になります。

低温調理の一番注意する事って・・・?

低温調理は本当に肉などを柔くジューシーに誰でも作れる、

優れた料理方ですが、一番注意する事は衛生管理です。

その時によく出てくるのが今回説明するD値やZ値です。

これまでの記事にも、簡単に説明してきましたが、

今回改めてしっかり説明していきます。

D値って一体なんやねん?

何度か書いてきましたが、D値と言うのは、

 

特定の温度で加熱した時に、

生菌数を十分の一まで減らすのにかかる時間の事です。

 

例えばカンピロバクター(鶏肉での食中毒菌の代表的な菌です)

と言う食中毒菌は53℃のD値は5分です。

これは53℃の温度で5分間加熱すれば、

十分の一だけ減らす事が出来ると言う事を表しています。

 

ただここで注意してほしいのは

 

 

5分間加熱すると言う事でなく、

食材自体がその温度になってから5分間と言う事です。

 

滋賀県の食品安全監視センターのホームページから引用しますと

 

D値が3分であったとすると、生菌数をそれぞれ1/10 ・1/100にするのに必要な加熱時間は

必要な殺菌 必要な加熱時間 計算式
生菌数を1/10 3分間(D値) 1/10=(1/10)×1 3分間
生菌数を1/100 6分間(D値の2倍) 1/100=(1/10)×(1/10) 3分間+3分間

 

また初期の生菌数が100gあたり、

それぞれ10万個・1億個であった場合十分な殺菌(生菌数が100gあたり1個以下)にする時間は

初期の生菌数 必要な加熱時間 計算式
100,000/100g 15分間(D値の5倍) 1/100,000=(1/10)の5乗 3分×5
100,000,000/100g 24分間(D値の8倍) 1/100,000,000=(1/10)の8乗 3分×8

生菌の初期数が多ければ、殺菌のための時間は当然長くなり、

予想以上に汚染があった場合は加熱殺菌が不十分になる事が有るので、

食材の汚染防止対策は必要です(食中毒予防3原則の増やさないです)

当然この事は低温調理に限った事でなく、一般的な食中毒予防です。

D値のデメリット

D値は安全性の基準になると言うのは、何となく分かったと思います。

それぞれ加熱時間の安全とされる目安は、医療関係で6乗とされていますので、

おおよそD値の6倍と考えていいんですが、

菌の種類によってそれぞれ違うと言う厄介な事が有るんです。

 

そこで今度はZ値と言うのを考えるんです!

Z値って一体何やねん?

Z値と言うのは加熱時間D 値を1/10 する為に必要な温度このとです。

チョット意味が分かりにくいですか?

 

多くの微生物は加熱温度を上げると、

それと伴い死滅またはそれに近い死滅状態に成ると言うのは何となく分かると思います。

これはD値と違い、どんな細菌にでも同じです(ここまでは大丈夫ですよね)

なのでZ値がわかれば、それぞれの加熱温度での時間ががわかるんです。

通常一般細菌でZ=5~8℃・耐熱性の強い芽胞細菌でZ=7~8℃です。

 

チョット解りにくいですか?

 

例えばZ=8℃の場合、食品加熱温度63℃で30分を基にすると

加熱温度 加熱時間 計算式
63℃ 30分 法に規定されている殺菌加熱条件
71℃ 3分 63℃+8℃で30分×1/10
79℃ 18秒 71℃+8℃で3分×1/10
87℃ 2秒 79℃+8℃で18秒×1/10

この表で何となくイメージつかめたんではないでしょうか!

(まぁ!覚えなくても大丈夫です、Z値ってそんな意味なんだのレベルで!)

実際低温調理をする時の温度や時間の求め方は?

ここまでD値とZ値について説明してきました。

細かい事覚えなくて大丈夫ですよ!そんな意味が有るんだ位で!

実際それぞれ覚えたからって、実際料理をする時にどうすればいいかなんて、

ややこしすぎてメッチャめんどくさくなりやる気が失せてしまいますよね。

ここでは以前の記事で簡単に紹介した、加熱時間の公式を少し詳しく。

低温調理の安心安全な加熱温度と時間の求め方は?簡単にできるの?

 

そこで登場するのがこの公式で、とりあえず数字を入れれば加熱時間が計算できます。

 

D=Dr10^(Tr-T)/Z

 

「なんか余計めんどくさそうやなぁ~!」なんて思っていませんか?

この式について説明しますが、何度も言いますが、内容は覚えなくても問題ないですので!

あなたがもし興味が有るかも知れないので説明します。

 

D値・Z値を使って、その微生物の加熱殺菌は10を底とする常用対数を用いて求めます。

(高校時代に習っているはずですが、結構難しくてよく分からなかった記憶が有ります、

まぁ~あの逆関数と言うやつでlogって記号とかですよ)

 

微生物は一定温度T(℃)で加熱すると、その生残菌数は常用対数と処理時間との間には

一般的に直線関係が知られています。

その直線部分の時間における菌数を1/10にする為に必要な時間をD値(分)と言い、

この直線の傾きの逆数がD値(分)に等しい。

 

ある温度T(℃)に対して、そのD値の対数値をプロットした曲線をTDT曲線と言う。

この曲線は一般的に直線性が認められている。

そこであるD値が1/10(又は10倍)になるような温度変化をZ値(℃)と呼ぶ。

したがって、ある微生物についてそのZ値と対照するTrでのD値Drが求められれば、

ある温度におけるD値は次の式で求められる

D=Dr10^(Tr-T)/Z

(加熱処理における微生物死滅の予測とその評価(日本食品工学誌・藤川浩)から引用しました)

 

法的条件の加熱殺菌は63℃で30分を基にしています。

 

加熱時間=30(分)×10^(63℃―しようとする加熱温度)/Z

 

Zは5~8なので一番りリスクが無くなる8を代入します

Drには30(分)

Trには63(℃)を入れる事で

有る加熱温度T(℃)の63℃・30分と同等な加熱殺菌時間がわかると言う事になります。

 

例えば61℃で加熱しようとすると

D=30×10^(63-61)/8

=30×10^(2/8)

(10^(2/8)はエクセルで計算すると1.778279です。

関数対応の計算機ならどれでも出来ます)

=53.34838(分)になります。

参考まで温度と時間の計算表を

 

これが実際での加熱温度と時間です!

ここで注意する事は、これまでも何度も書いてきましたが

食材全体(内部まで)がこの温度になってからの時間なので、

ここにそれまでの時間を加えなければなりませよ!!

「さらにこれに食材全体が、その温度になるまでの事を考えるの?

メッチャめんどくさいやん」って言われそうですが、

低温調理の最大の注意すべきことは、低温であるが故の殺菌効果なんで我慢してください!

 

この時間の求め方は、本当にややこしすぎて私たちの数学(算数レベル)では理解不能です。

それだ単純に次の表を目安に時間を足せばいいです。

 

食材の水分・種類・筋肉質の種類などなどにより異なる点と、

脂分が多いほど時間が長くなることを考慮してください。

表の見方は45℃~80℃間のに設定された湯煎器の水温の-5℃になるのにかかる時間。

何度か時間を計りながら作ってみた経験からは、

ブロック状は円柱状とほぼ同じ時間でいいように感じました。

(あくまでも個人的な経験からです。鶏胸ハムと蒸し鶏を何度か作った時の時間から)

 

(internationl journal of gastronomy and food scienceより引用しました)

厚さ(mm) ブロック状 円柱のような 球状
5 5  分 5  分 4  分
10 19  分 11  分 8  分
15 35  分 18  分 13  分
20 50  分 30  分 20  分
25 1時間15分 40  分 25  分
30 1時間30分 50  分 35  分
35 2  時間 1  時間 45  分
40 2時間30分 1時間15分 55  分
45 3  時間 1時間30分 1時間15分
50 3時間30分 2  時間 1時間30分
55 4  時間 2時間15分 1時間30分
60 4時間43分 2時間30分 2  時間
65 5時間30分 3  時間 2時間15分
70 3時間30分 2時間30分
75 3時間45分 2時間45分
80 4時間15分 3  時間
85 4時間45分 3時間30分
90 5時間15分 3時間45分
95 6  時間 4時間15分
100 4時間45分
105 5  時間
110 5時間30分
115 6  時間

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1878450X11000035#bib7

その他のいろんなことが書いてありますので、興味が有れば一度見るといいと思います。

(英文ですが、翻訳機能を使えば読めますから、本当に科学は進歩していますね)

 

最後に

低温調理のレシピを見る時に、これらの数字を参考にすることで

加熱温度と時間、それにその食材の形状(厚さとか)が無い物は

チョットどうかと感じますよね!

だってその温度と時間の根拠がわからないんですから。

 

それから炊飯器などでは温度が調整できないとか、ヨーグルトを作る機械では

温度が不安定になりやすいとかでどうしても低温調理をしようとすると、

少し無理が生じます。できればちゃんとした機器をおススメします!!

(画像をクリックすると公式サイトに移動します)

本当に使ってみてこの低温調理機はすごいと思いました。

日本のメーカーなので解説書も日本語だしわかりやすいです。

これからこの機器を使って作った料理をいろいろ紹介していきます。

低温調理なら、シットリ・ヘルシー!鶏胸肉のハムは家でもできるんだぁ!

 

加熱温度と時間が低温調理にどれだけ大切な事は分かったと思います。

でも食中毒の予防は、低温調理だけでなく

食中毒菌を「付けない・増やさない・殺す」の3原則が基本です!

 

最後までお付き合い有難うございました。

 

運営者 春眠